台本公開!
- 6月12日
- 読了時間: 4分
台本を、公開します。
《もう一度、同じ部屋で》は、物語を追う作品ではありません。
同じ夕方が、時間を変えて繰り返される中で、
ふたりの距離や呼吸が、静かに変わっていく——
その「見えない変化」を、自分自身の感覚として受け取る作品です。
だから、台本を読んでも「ネタバレ」にはなりません。
むしろ、読んでから観ると、また違う景色が見えます。
自分のどの場面と重なるか、持って来てほしいから。
観る前に読んでも、観た後に答え合わせとして読んでも。
あなたのペースで、この部屋に入ってきてください。
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## 設定
かつて結婚し、10年前に別れたふたり。
彼女はアパレルのデザイン職。実家だったマンションを相続し、ひとりで暮らしている。
彼は作曲家でピアニスト。自宅で水漏れが起き、ピアノが使えなくなった。締め切りは迫っている。
そのとき彼は思い出す——あの家に、ピアノがあったことを。
突然の連絡に、彼女は戸惑いながらも渋々承知した。
期間限定のはずの、同居生活が始まる。
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## Scene 1 1日目・夕方
彼女が部屋を掃除している。
そこへ、荷物を抱えた彼がやってくる。
ぎこちない空気の中で、ふたりは約束事を決める。
・リビングは綺麗に使うこと。
・お風呂は入りたい方が先に入ること。
・相手に期待をしないこと。
・一緒にご飯を食べること。
・連絡はすること。
それぞれの場所へ戻っていく。
彼はピアノへ。彼女はひとりの部屋へ。
ーー「よし、これで作曲できる!」
ーー「私の家に、あの人がいるのは変な感じ…」

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## Scene 2 2週間後・夕方
仕事から帰宅した彼女。
彼が出迎え、ビールを手渡す。
家に人がいることに、少し慣れてきた。
ラジオから、昔ふたりでいた頃によく流れていた曲が流れる。
音量を上げる彼女。下げる彼。また上げる。また下げる。
酔った彼女が彼に絡みはじめる。
拒みながらも、「この子はこういう子だった」という懐かしさが滲む。
彼がラジオを止めて、ピアノを弾き始める。
彼女が踊り出す。
言葉もなく、ふたりの時間がほんの一瞬だけ、あの頃に戻る。
ふと我に戻るふたり。「ごめんごめん」と苦笑いして、それぞれの場所へ。
ーー「あっ、うん。。作曲しなきゃ…だしな」
ーー「焦った。。でもこの時間が楽しかったんだよね」

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## Scene 3 1ヶ月後・夕方
3日間の出張から帰ると、部屋が荒れていた。
作曲に行き詰まると、彼は周りが見えなくなる。
楽譜を一枚そして一枚拾い上げる彼女に、彼が突然怒り出す。
地雷を踏んだ。
心配して声をかけても、届かない。
彼女はだんだん、邪魔者になっていく。
「ああ、これよね…思い出したよ。」
苛立ちが限界に達して、彼女はリビングの服と楽譜をかき集める。
彼を、部屋から追い出す。
かつてない彼女の行動に、彼は戸惑いながらがら戻ってくる。
ぎこちなく片付けを始め、椅子に座って、ちらちらと彼女の様子を窺う。
その犬みたいな目線に、思わず笑ってしまう。
彼女は楽譜を彼に渡して、寝室へ。
ーー「うん。そうだよな。…作曲しよう」
ーー「昔は言えなかったことが、今は言える。お互い人は変わっていくんだ」

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## Scene 4 3ヶ月後・夕方
彼女が、1枚の紙を手に帰宅する。
病院からの、検査結果だった。
目の前が、闇になる。
彼が紙を受け取り、そっと声をかける。でも彼女の耳には届かない。
暴れ出すものを、抑えようとする。抑えられない。
いたたまれなくなった彼が、彼女を抱きしめる。
やっと、現実に戻る。
「ごめんね」
彼女が寝室へ戻ると、リビングからピアノの音が聴こえてくる。
作曲の音楽じゃない。彼女に向けた音楽だった。
体に音が入ってくる。ゆっくりとリビングへ戻り、弾き続ける彼の横に座る。
一瞬、音楽が止まる。また、始まる。
身体の中で暴れていたものが、少しずつ、音符に変わっていく。

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## Scene 5 その後・朝
いつもの朝。
彼女は彼完成した音楽を、聴かせてほしいと頼む。
彼がピアノを弾く。
少しだけゆったりとした時間が流れる。
弾き終わると、彼女は彼を玄関まで見送る。
「行ってらっしゃい。バイバイ」
ひとりになった彼女は、大きく伸びをする。
部屋を片付けて、ピアノの蓋をそっと閉める。

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弱さも強さも引き受けた先に、呼吸が深くなる。
小さな変化が、人生の温度を変えていく。
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Dance Marché 《もう一度、同じ部屋で》
2026年6月13日(土)・14日(日)
神楽坂セッションハウス
池上直子 × イーガル


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